見舞いに行ってきた

bukky2005-01-26

「また、そんな事を言って人を驚かせて・・・冗談でしょ?」と言うと、「いやいや、それがなぁ、ほんとに肺がんの第三期なんよ」と、本人は至って陽気に振舞いながら応える。以前から疲れや、微熱や、風邪に似た症状が続いていて年末には胸の痛みを訴えていた。レントゲンにはかなり大きな陰影。細胞検査をしても既に死んだ組織しか摘出されなく、検査につぐ検査で、いくら陽気に振舞ってもその疲れは隠し切れない。新鮮な空気でも吸いに行こうと私を誘う。「昼から抗がん剤入りの点滴を打っているんよ」と、点滴の器具をゴロゴロ押しながらエレベーターに乗り屋上に上がる。屋上に着きドアが開く。全館禁煙の張り紙が目に入る。なのに、そこは喫煙者の唯一のオアシスと化していた。
彼は既に自分の末期に向かう覚悟はしているようだ。ただ、末期を延長戦に持ち込む戦いの意識も十分にある。タバコを燻らせながら世間話に花を咲かせてはいたものの、こちらのほうが神妙な気持ちにさせられる見舞いに行ってきた。